初詣の授与所で、子どもが引いたおみくじを広げた瞬間に「きょう、って何て読むの」「凶ってわるいの」と聞かれて、返事に詰まった経験はないでしょうか。三が日の行列の中、後ろに人が並んでいる状態で、吉凶の意味を短く正しく伝えるのは案外むずかしいものです。この記事では、子どもへの説明の言葉、年齢ごとの楽しみ方、家族で結果を見比べるときの考え方、混雑した正月の授与所でのコツ、持ち帰ったおみくじの残し方までを扱います。
御要旨
子どもには「おみくじは神様からのお手紙」と伝えるのが一番通じる
吉凶の順番や確率から説明を始めると、子どもは最初の「大吉」だけを覚えて、あとは点数の高い低いとして受け取ります。「神様が今のあなたを見て書いてくれたお手紙」と先に伝えておくと、凶が出ても「お手紙の中身を読む」という行動に自然につながります。
吉凶は点数ではなく、今の様子とこれからのヒントを示している
神社本庁は、おみくじは単に吉凶判断を目的として引くのではなく、その内容を今後の生活指針としていくことが何より大切と説明しています(出典 神社本庁)。つまり大吉か凶かという見出しは、お手紙の一行目にすぎません。子ども向けに言い換えるなら、「大吉は『いま調子がいいよ』、凶は『ちょっと気をつけてね』って教えてくれているんだよ」で十分です。
学校の通知表とは違い、おみくじには「がんばった分だけ良い結果が出る」という仕組みがありません。だからこそ、良い結果が出た兄と凶が出た弟のあいだで「えらい・えらくない」の差はつかない、と親がはっきり言ってあげる必要があります。(この一言があるかどうかで、帰り道の空気が変わります)
凶を引いて泣く子には「これから良くなると書いてある」と言い換える
凶を引いた子が泣き出すのは、正月の境内では珍しい光景ではありません。そのとき「気にしなくていいよ」と流すより、紙に書いてある言葉を一緒に読むほうが早く落ち着きます。実際に凶のおみくじを読むと、「あせらず」「人のいうことをよく聞け」「時期を待て」のような、これから上向くための注意が書かれていることがほとんどです。
声かけの例をいくつか挙げます。
- 「凶は『いまは準備のとき』っていう意味。春からぐんぐん良くなるって書いてあるよ」
- 「神様が、今年いちばん気をつけることを先に教えてくれたんだね」
- 「お手紙をちゃんと読んだ人だけ、気をつけられるんだよ。読まなかった人は気をつけられない」
- 「お父さんも昔、凶を引いた年に大事なことに気づけたよ」(実話があれば一番効きます)
凶は、保健室の先生が「今日は無理しないでね」と声をかけてくれたようなものです。叱られたわけでも、罰を受けたわけでもありません。凶の確率や大人向けの対処は凶や大凶が出たときの対処法にまとめていますが、子どもに伝えるのは「気をつけることが分かった」の一点で足ります。
年齢別の楽しみ方は「引く」「読む」「調べる」で切り替える
おみくじの楽しみ方は年齢で変わります。未就学児は引く体験そのもの、小学生は自分で読むこと、中高生は項目を自分の生活に当てはめることが主役になります。
| 年齢 | 主役になる体験 | 親の関わり方 |
|---|---|---|
| 未就学児 | 箱から自分で引く。絵や動物の形を楽しむ | 吉凶は一言で。読み聞かせる |
| 小学生 | 自分で音読する。知らない漢字を調べる | 意味を聞かれたら一緒に辞書を引く |
| 中高生 | 学問・恋愛など自分に関わる項目を読む | 結果には踏み込まず、聞かれたら答える |
未就学児は絵入りや動物みくじで「自分で引く」体験を主役にする
三歳から六歳くらいの子にとって、おみくじの中身は二の次です。授与所の箱に手を入れて一枚を選ぶ、筒を振って棒を出す、その動作自体が正月の思い出になります。親が代わりに引かず、時間がかかっても自分で引かせるのがコツです。
文字が読めない年齢なら、干支やうさぎ、鯛などの人形の中におみくじが入った動物みくじがある神社を選ぶと、引いたあとも人形を持って歩けるので飽きません。どの神社で引けるかは動物みくじが引ける全国の神社を参考にしてください。(人形は帰ってからおもちゃ箱に入るのが常ですが、それで構いません。神社の記憶が家に残ります)
小学生は自分で読ませて、漢字の言葉を一緒に調べる
小学生になると、おみくじは国語の教材にもなります。「待ち人」「失せ物」「商い」など、教科書には出てこない言葉が並んでいるので、読めない漢字を指でなぞりながら音読させてみてください。「失せ物って何」と聞かれたら、その場でスマートフォンで調べるより、家に帰ってから辞書を引くほうが記憶に残ります。
低学年なら「学業」の一行だけ、高学年なら和歌まで読めます。和歌の意味は大人でも即答できないので、「お母さんも分からないから一緒に調べよう」と言えるのが、この年齢のおみくじの良いところです。
中高生は学問・恋愛の項目を自分で読み解く年齢
中高生になると、おみくじは親と一緒に見るものから、自分だけで読むものに変わります。受験生なら「学問」、部活の大会や友人関係で悩んでいるなら「争事」や「恋愛」を、本人が黙って読み込んでいるはずです。この年齢では親が結果を覗き込まないのが礼儀で、聞かれたときだけ「学問」の読み方や「恋愛」の読み方を一緒に見る程度が良いでしょう。
家族の結果は順位づけしないで「同じ日の別々のお手紙」として並べる
家族四人で引くと、その場で必ず「誰がいちばん良かったか」の話になります。ここで順位をつけてしまうと、凶を引いた一人がその日ずっと不機嫌になります。家族のおみくじは、同じ元日に家族それぞれへ届いた年賀状のようなものです。宛名が違うのですから、並べて優劣をつける意味がありません。
見比べるときの言い方を変えるだけで、会話の中身が変わります。
- 誰が大吉かより、誰の「願い事」が一番具体的に書かれているかを読み比べる
- 家族全員の「健康」の項目だけを順番に読み上げる
- それぞれの和歌のどこが好きかを一人ずつ言う
- 「今年気をつけること」を一人一つずつ、自分のおみくじから選んで宣言する
親が凶だったときは隠さず「気をつけることが分かった」と見せる
親が凶を引いたとき、子どもの手前でこっそり結んで済ませたくなります。ただ、これは子どもに「凶は恥ずかしいもの」と教えているのと同じです。「お父さんは凶だった。今年は無理しないでって書いてある。だから健康に気をつけるよ」と声に出して読む姿を見せるほうが、その後の子どもの凶との付き合い方が楽になります。(この年に限って本当に体調を崩さないよう気をつける、という副産物もあります)
混雑した初詣で子どもと引くなら、授与所の列と初穂料の受け渡しを先に決めておく
三が日の大きな神社では、参道の行列、賽銭箱の前の列、授与所の列と、三回並ぶことになります。屋台の甘い匂いと寒さで子どもの集中力は長く持ちません。おみくじの列で泣き出す前に、次の段取りを済ませておくのがベターです。
- 初穂料は家を出る前に子どもの分の硬貨を渡し、ポケットに入れさせておく。百円玉や五百円玉一枚で引ける神社が多い
- 授与所の窓口では、硬貨を賽銭箱型の入れ物に自分で入れさせる。「お金を払って買う」より「納めてから頂く」という順番が体で分かる
- 引いたおみくじは、列を抜けて境内の端や社務所の壁ぎわまで移動してから開く。列の中で開くと後ろがつかえて、読む時間が取れない
- 手がかじかんで紙が開けないことがあるので、手袋は外させてポケットに入れておく
- 兄弟が一緒に引くなら、開けるのは全員がそろってから。先に開けた子の結果に引きずられずに済む
参拝の順番は、お参りを先に済ませてからおみくじです。子どもは授与所の絵馬やお守りに目を奪われて先に行きたがりますが、「ご挨拶してからお手紙をもらう」と伝えれば、順番の理由が伝わります。
結ぶか持ち帰るかは子どもに決めさせる
「凶が出たら結ばないといけない」と信じている大人は多いのですが、これは俗説です。神社本庁は、境内の結び所に結んで帰る習わしもあるが、持ち帰っても差し支えないとしています(出典 神社本庁)。つまりどちらを選んでも作法として間違いではないので、結ぶか持ち帰るかは子ども本人に選ばせて構いません。
結ぶなら、木の枝ではなく神社が用意した結び所を使います。背が届かない子は親が抱き上げて結ばせると、その動作も記憶に残ります。持ち帰るなら、境内では親が預かっておき、家に着いてから子どもに返します。(子どものポケットに入れたままだと、屋台を回るうちに落とすことが多いです)結ぶことと持ち帰ることの違いはおみくじは結ぶのと持ち帰るのどっちが正解?に詳しく書いています。
正月の結び所は、三が日のうちに紙で埋まって手が届く場所がなくなることがあります。小さな子が背伸びして結べない場合は無理に隙間へ押し込まず、持ち帰るほうに切り替えてください。他の人のおみくじをほどいて場所を空けるのは避けるべき行為です。
持ち帰ったおみくじは写真と手帳で残して一年後に一緒に読み返す
持ち帰ったおみくじの一番良い使い方は、次の正月に家族でもう一度読むことです。柱に刻んだ身長の印と同じで、一年前の一枚を並べて初めて「変わったところ」が見えてきます。
残し方はむずかしく考える必要がありません。
- 引いた直後に、境内でおみくじと子どもの顔を一緒に写真に撮る。日付と場所が自動で残る
- 子ども用の手帳や連絡帳の一月のページに、四つ折りにして挟む
- 冷蔵庫や子ども部屋の壁に、一月のあいだだけ貼っておく。二月に入ったら手帳へ移す
- 「今年気をつけること」を一行だけ、親が別の紙に書き写して神棚や本棚に置く
翌年の初詣の前夜に、去年の一枚を出して家族で読み返してみてください。「本当に気をつけられたか」「願い事はどうなったか」を話す時間が、初詣の前日に自然に生まれます。読み終えた古いおみくじは、翌日の初詣で古札納所に納めれば、一年の区切りとしてきれいに回ります。
子どもとおみくじのよくある質問(何歳から引ける?二枚引きたい)
何歳から引いてもよく、年齢の決まりはない
各地の神社を調べても、おみくじに年齢の制限を設けている例は見当たりません。赤ちゃんの分を親が代わりに引く家庭もあります。自分の手で箱に手を入れられるようになったら、その年が「初めてのおみくじ」で良いでしょう。(初穂料を自分で納めるところまで含めると、三歳前後からが一つの目安になると見ています)
二枚引きたがるときは「一人一通」と説明する
凶を引いた子が「もう一回」と言い出すのは、正月の授与所ではよく見る場面です。お手紙のたとえをそのまま使い、「神様は一人に一通しか書かないよ。二通目をもらっても、一通目のほうが本物だよ」と伝えると、大半の子は納得します。(それでも納得しない子には、別の神社に行った日に「別の神様のお手紙」として引かせる手があります)
七五三のおみくじは初詣と違う楽しみ方になる
七五三の参拝でもおみくじを引けますが、晴れ着で動きにくいことや、写真撮影が主役になることから、初詣とはまた違った工夫が要ります。七五三ならではの引き方は七五三でおみくじを引こう(子供向けおみくじの楽しみ方)にまとめています。
最後に
子どもに吉凶を説明するときの軸は、おみくじは点数ではなく神様からのお手紙だという一点です。凶が出たら泣かせたまま流さずに紙の言葉を一緒に読む、家族で見比べるときは順位をつけない、結ぶか持ち帰るかは本人に決めさせる。この三つを守れば、混雑した三が日の授与所でも、おみくじは家族の会話を増やす道具になります。持ち帰った一枚を翌年の正月に読み返す習慣まで作れれば、初詣は「行く」だけの行事から「一年を振り返る」行事に変わります。
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