元日の朝に近所の氏神様へお参りし、午後は電車で大きな神社へ。初詣を二社、三社と回る人は珍しくありませんが、「神様が嫉妬する」「おみくじは一枚だけにしないと効かない」という話を聞いて、二社目の授与所の前で手が止まることがあります。結論から言えば、初詣で複数の神社を回ることも、二社目でおみくじを引くことも、作法の上で問題はありません。この記事では、はしご参拝が問題ない根拠、二社目の結果が一社目と違ったときの読み方、元日に回る順番と混雑の実際、そして何社まで回るかの目安まで解説します。
御要旨
初詣で複数の神社を回っても神様は怒らない
「複数の神社に行くと神様同士が嫉妬して、ご利益を打ち消し合う」という話は俗説です。神社本庁は、住んでいる土地を守る氏神神社と、個人の信仰で選ぶ崇敬神社について「1人の方が両方を共に信仰(崇敬)しても差し支えありません」と明記しています(出典 神社本庁)。日本の神道には八百万(やおよろず)の神という考え方があり、そもそも一柱の神様だけを選んで他を拒む発想がありません。
正月に複数の寺社を巡る習わしは、古くから定着しています。代表例が七福神めぐりで、正月の松の内に七つの寺社を順に回って七柱の神様を参拝する行事は、江戸時代から各地で続いてきました。恵比寿は神社、大黒天や弁財天はお寺に祀られていることが多く、七福神めぐりの多くは神社とお寺の両方を回る構成になっています。複数の神社をはしごすることが不作法なら、この行事そのものが成り立ちません。(三が日の朝、御朱印帳を手に七福神の案内板をたどる人の列は、今も下町の正月の風景です)
神社とお寺を同じ日に回るのも普通のこと
「神社に行った日にお寺へ行くのは節操がない」という話も、根拠のない俗説です。明治時代の神仏分離令までは、神社の境内にお寺があり、お寺の中に神社があるのが当たり前でした。今でも浅草寺と浅草神社のように、隣り合って建つ寺社は全国にあります。元日に浅草寺で参拝してから浅草神社でおみくじを引く人は、はしごをしている意識すらないはずです。神社とお寺のおみくじの違いは、神社とお寺のおみくじの違いの記事にまとめています。
二社目でおみくじを引くのも問題ない
はしご参拝が問題ないのと同じ理由で、二社目、三社目でおみくじを引くことにも作法上の制約はありません。ここで混同しやすいのが、「同じ神社で同じ日に引き直す」話です。気に入らない結果が出たからと、同じ授与所で立て続けにもう一枚引くのは、最初の託宣を聞かなかったことにする行為なので、本来の意図から外れます。引き直しのルールはおみくじは何回引いていいかの記事で詳しく扱っています。
別の神社で引くおみくじは、この引き直しとは別の話です。神社が違えば、祀られている神様も、おみくじの紙そのものも違います。段階の数が七段階の神社もあれば十二段階の神社もあり、和歌が載っているものも、神様の教えが漢文調で書かれているものもあります。二社目のおみくじは、別の神様から受け取る別の託宣で、一社目の結果を上書きする性質のものでもありません。
引き直しは同じ相手への聞き直し、二社目は別の相手への相談
たとえるなら、同じ神社での引き直しは、上司に一度言われた指示が気に入らなくて「もう一回言ってください」と聞き直すようなものです。答えは変わらず、印象だけを変えようとしている状態です。一方、別の神社でおみくじを引くのは、部署の違う先輩にも相談してみる行為に近く、視点の違う助言がもう一つ手に入ります。二人の先輩の答えが違ったとき、どちらが本物かを決める必要がないのと同じで、二枚のおみくじも優劣をつけるものではありません。
神社本庁は、おみくじについて「単に吉凶判断を目的として引くのではなく、その内容を今後の生活指針としていくことが何より大切」と述べています(出典 神社本庁)。生活指針という位置づけで考えれば、指針が二つ手に入ることはむしろ材料が増えたことになります。
二社目の結果が違ったら「別の質問への答え」として読む
一社目で中吉、二社目で末吉。あるいは一社目で凶、二社目で大吉。はしご参拝でおみくじを引くと、吉凶が食い違うのはよくあることです。このとき「どちらが本当の運勢か」を決めようとすると、良い方だけを信じる、悪い方を打ち消したことにする、という都合のよい読み方になりがちです。(正直なところ、二枚引いた人のほとんどは良い方を採用します。それが悪いわけではありませんが、もったいない読み方です)
おすすめの読み方は、二枚を別の質問への答えとして扱うことです。氏神様には「今年、この土地で暮らす自分はどうか」を、遠方の大きな神社には「今年取り組みたい仕事や願いはどうか」を聞いた、と考えます。実際に参拝の目的が違うのであれば、答えが違うのはむしろ自然です。
吉凶で選ばず本文の共通点を探す
二枚並べたら、まず吉凶の文字を隠して本文と項目を読み比べます。神社が違えば言い回しも違いますが、同じ方向を指している記述は意外に見つかります。
| 一社目(例) | 二社目(例) | 読み取れる共通点 |
|---|---|---|
| 中吉。「急がば回れ。慎重に進めば吉」 | 末吉。「時を待て。焦りは禍のもと」 | 吉凶は違うが、二枚とも「急ぐな」と言っている |
| 凶。「待ち人 来ず」「願望 叶いがたし」 | 吉。「待ち人 遅れて来る」「願望 のちに叶う」 | どちらも「すぐには来ない」。時期がずれるだけ |
| 大吉。「商売 利あり」「学問 安心せよ」 | 小吉。「商売 控えめに」「学問 努力せよ」 | 方向は逆に見えるが、「今の努力を続ける」で両立する |
共通点が一つでも見つかれば、それが二社の神様から重ねて言われたことになります。おみくじの本文は、吉凶よりも「待ち人」「願望」といった項目の記述の方が具体的で、行動に落とし込みやすい作りになっています。
一社目が凶で二社目が吉なら「凶を無かったことにしない」
はしご参拝で最も相談が多いのが、この組み合わせです。氏神様で凶を引いてしまい、気を取り直して二社目で引いたら吉が出た。この場合は、凶の方に書かれていた注意点を、吉の方に書かれていた進め方で乗り越える、と読むのがベターです。吉が凶を打ち消したという読み方は、凶に書かれた助言を捨てることになります。凶のおみくじは「今は低い位置にいるが、ここから上がる」という意味を持つことが多く、二社目の吉はその上がり方の助言として読めます。凶が出たときの考え方は凶や大凶が出たらどうするかの記事にまとめています。
逆に一社目が吉で二社目が凶だった場合も同じで、吉の方が本命で凶は外れ、とは考えません。吉のおみくじで示された良い流れの中で、どこに落とし穴があるかを凶の方が教えてくれた、と読みます。(一社目で大吉が出て浮かれていたところに二社目で凶が出る。正月の境内でよく見る光景で、この二枚の組み合わせは一番ためになります)
はしごするなら氏神様を先に回るのが基本
回る順番に厳密な決まりはありませんが、先に住んでいる土地の氏神様、次に崇敬する神社や有名な神社、という順が基本です。神社本庁の恒例祭によると、元日には「新年を祝い、皇室のご繁栄と国の隆昌を祈るとともに、氏子崇敬者と地域社会の平和と繁栄を祈り」歳旦祭(さいたんさい)が行われます(出典 神社本庁)。氏子として日頃見守られている神社に新年の挨拶をしてから、遠方の神社に足を伸ばす。この順序が、暮らしの実感にも一番しっくりきます。
元日の移動と授与所の混雑を計算に入れる
はしご参拝で計画が崩れる原因は、参拝そのものより移動と行列にあります。元日の午前十時を過ぎると、有名神社の参道には鳥居の外まで列が伸び、拝殿まで一時間以上かかることも珍しくありません。参拝を終えてから授与所に並び直すと、おみくじ一枚のためにさらに二十分、三十分と並ぶことになります。有名神社を二社続けて回ると、それだけで午後がまるごと消えます。
- 氏神様は元日の朝八時台に済ませる。地元の神社なら並んでも数分で、屋台も出る前の静かな境内で落ち着いておみくじを読める
- 有名神社は昼を外す。三が日なら夕方十六時以降、可能なら四日以降の平日に回すと行列が短い
- 神社周辺の駐車場は元日に満車になるため、二社目以降は電車やバスで動く。臨時列車や交通規制の情報を事前に確認する
- 授与所は拝殿より早く閉まる神社がある。夜の参拝を予定するなら、おみくじの受付時間を先に調べておく
- 御朱印をいただくなら、おみくじより先に御朱印帳を預ける。正月は書き置き対応の神社が多く、受け取りに時間がかかる
御朱印とおみくじのどちらを先にするか、参拝のどの段階でいただくかは、御朱印とおみくじの順番の記事で整理しています。
三が日は多くの神社で授与所の受付時間を延長していますが、延長の有無や終了時刻は神社ごとに異なります。二社目、三社目を夕方以降に回す場合は、各神社の公式サイトや正月の案内で受付時間を確認してから出発してください。
寒さと体力も回る社数を決める要素になる
元日の参道は、風が抜けると体感で氷点下近くまで冷えます。一社目の行列で四十分立ち続けたあとに二社目で同じ時間並ぶと、おみくじを引く頃には指がかじかんで紙を開くのも億劫になります。小さな子どもや高齢の家族と一緒なら、二社目は暖を取れる休憩を挟んでから向かうか、翌日に分けるのが現実的です。(甘酒の屋台がある神社を二社目に選ぶと、家族の反応が目に見えて変わります)
何社まで回るかに決まりはないが、本文を読まない回り方が一番もったいない
「初詣は三社まで」「おみくじは二枚まで」といった上限は、どこにも定められていません。七福神めぐりのように七か所を回る行事が正月の習わしとして続いている以上、社数そのものを気にする必要はありません。
ただし、社数が増えるほど、おみくじ一枚あたりにかける時間は減ります。神社本庁は、引いたおみくじは「充分に読み返し、自分自身の行動に照らし合わせてみたいもの」としています(出典 神社本庁)。五社回って五枚引き、吉凶だけ確かめてすべて結んで帰るのは、五冊の本を買って目次だけ読んで棚に並べるような行為です。冊数を誇るより、一冊を読み込んだ方が身になります。
実際にはしご参拝をする人を見ていると、落ち着いて本文まで読めるのは二社、多くても三社までという印象です。(これは経験上の目安で、移動が楽な都市部なら四社でも無理はありません)四社目、五社目は、おみくじを引かずに参拝だけにする、あるいは日を改めて松の内(関東では一月七日、関西では一月十五日までが一般的です)のうちに回すという選び方も考えられます。
はしご参拝のおみくじでよくある質問
三社回って三枚とも凶だったときは「共通する注意点」を今年の課題にする
三社で三枚とも凶が出ると、さすがに落ち込みます。ただ、三つの別々の神社が同じ方向の注意を出したと考えれば、これほど親切な結果もありません。三枚の本文を並べて、共通して出てくる言葉を探してください。「慎め」「争うな」「待て」など、同じ趣旨の言葉が重なっていれば、それが今年の課題として最も信頼できる指針になります。三枚とも結んで帰ってしまうと見返せなくなるので、少なくとも一枚は持ち帰って財布に入れ、年内に何度か読み返すことをおすすめします。
持ち帰った複数のおみくじは日付と神社名を書いて一緒に保管する
二枚、三枚と持ち帰ったおみくじは、裏面や付箋に引いた日付と神社名を書いてから保管します。神社によって紙の大きさも印刷も違うので、数か月後に見返したときにどこで引いたか分からなくなるためです。保管場所は財布か手帳が定番で、複数枚なら手帳のポケットにまとめて挟むと散らばりません。一年後の初詣で古札納所に納めれば、役目を終えたおみくじの扱いとして十分です。神社本庁も、おみくじは結び所に結ぶ習わしがある一方で「持ち帰っても差し支えありません」としています(出典 神社本庁)。保管場所の選び方はおみくじの正しい保管場所の記事で詳しく扱っています。
恋みくじだけ別の神社で引くのは自然な使い分け
一社目で通常のおみくじを引き、二社目の縁結びで知られる神社で恋みくじを引く。この使い分けは、はしご参拝の中でも最も理にかなった形です。恋みくじは恋愛に特化した項目構成になっているため、通常のおみくじと内容が重なりません。一社目の総合運と、二社目の恋愛運を別々に受け取ることになり、二枚の結果がぶつかる心配もありません。恋みくじで評判の神社は恋みくじが当たると評判の神社の記事にまとめています。
最後に
初詣で複数の神社を回ることも、二社目でおみくじを引くことも、作法の上で問題はありません。神社本庁は氏神神社と崇敬神社の両方を信仰して差し支えないとしており、七福神めぐりのように複数の寺社を巡る正月の習わしも古くから続いています。二社目の結果が一社目と違ったときは、どちらが本物かを決めずに、別の質問への答えとして二枚の本文の共通点を探してください。回る順番は氏神様を先に、混雑と寒さを計算に入れて二社から三社までにとどめ、引いたおみくじは持ち帰って年内に読み返す。この回り方なら、はしご参拝は一年の指針を複数の視点から受け取る機会になります。
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